弁別わきま)” の例文
肝心かんじんの叔父さえただ船に乗る事を知っているだけで、後は網だか釣だか、またどこまでいで出るのかいっこう弁別わきまえないらしかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
生命いのちが大切という事を弁別わきまえておらん人ばかりだから、そこで木製の蛇の運動を起すのを見てきたまえと云うんだ。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巡査は頬を膨らして、「黙れ。場所柄も弁別わきまえず乱暴をいたしおる。棄置かれぬ奴等だ。華族方の尊威をけがすのみならず、ほしいままにここの売物をくらいよったは盗人どろぼうだぞ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし自分はそう丸くなったり四角になったりしては、第二の少女に対して済まない約束をもって生れて来た人間である。自分は年の若い割には自分の立場をよく弁別わきまえていた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)