廩米りんまい)” の例文
次年五月は廩米りんまい中より糯米じゆべい三俵を取つて柏餅を製し、津軽藩士と親戚故旧とにおくるを例としてゐたさうである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
鷲津毅堂は名古屋城外の新馬場しんばばに屋敷を賜った。毅堂がその本藩に聘せられた事は、そのかつて結城久留里の二藩から廩米りんまいを給せられた事とは全く事情を異にしていた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
在昔ざいせき、徳川政府勘定所かんじょうどころの例に、旗下はたもとの士が廩米りんまいを受取るとき、米何石何斗と書く米の字は、その竪棒たてぼうを上に通さずして俗様ぞくように※と記すべき法なるを、ある時、林大学頭より出したる受取書に
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
なるほど知行ちぎょうの制度が扶持ふちの制度に改まり、あるいは名は知行と称しながらその実管理権を政府に取って廩米りんまいをもって相当額を給するようになっては、武士と土地との因縁は一段と疎遠になるが
家の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
抽斎は留守居比良野貞固さだかたに会って、救恤きゅうじゅつの事を議した。貞固は君侯在国の故を以て、むねくるにいとまあらず、直ちに廩米りんまい二万五千俵を発して、本所の窮民をにぎわすことを令した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)