康衢こうく)” の例文
その点で日本とギリシャとは性質は全く異っても美の世界に於ける二つの大道康衢こうくを成すものである。
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
小家の間の小道を上りて久堅町ひさかたまちより竹早町たけはやちょうの垣根道を過ぐるにかつて画伯浅井忠あさいちゅうが住みし家の門前より、数歩にして同心町どうしんちょう康衢こうくに出づ。電車砂塵をいて来徃らいおうせり。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかるに奇とすべきは、その人が康衢こうく通逵つうきをばかり歩いていずに、往々こみちって行くことをもしたという事である。抽斎は宋槧そうざんの経子をもとめたばかりでなく、古い「武鑑」や江戸図をももてあそんだ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それまでは康衢こうくの一隅に立ち、時間を測って、逢うべき人の来るのを待っているのであるが、その予測に反して空しく時を費すことがあっても、翁は決して怒りもせず悲しみもしない。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)