左斜ひだりななめ)” の例文
と、女はその左側にある椅子を引き寄せて、讓とななめに向き合うようにして腰をかけたので、讓もしかたなしに椅子を左斜ひだりななめにして腰をかけた。
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
三造は一服するつもりで、朱筆しゅふでを置き、体を左斜ひだりななめにして火鉢ひばちの傍にある巻煙草の袋をり、その中から一本抜いてマッチをけた。はよほどけていた。
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
で、左斜ひだりななめにそれて女を追い越したが、女と親しみが無くなるような気がするので、足を遅くして女の往き過ぎるのを待って歩いた。と、女はり返って笑顔を見せた。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
武士は老僧にことばをかけようと思った。左斜ひだりななめにこちらを見ている老僧は右の眼がいて左の眼が潰れていた。武士はおかしくもあれば驚きもして見るともなしに小僧に眼をやった。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)