嶮悪けんあく)” の例文
これに反して東山道は道路も嶮悪けんあくに、運輸も不便であるから、ここに鉄道を敷設するなら産物運送と山国開拓の一端となるばかりでなく
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
我が草庵の門前はうぐいす横丁といふて名前こそやさしいが、随分嶮悪けんあくな小路で、冬から春へかけては泥濘でいねい高下駄を没するほどで
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
嶮悪けんあくな意外な沈黙が起った。それから夫人は言った、「ああ、私は甲板にまいりますわ」そして他の人々も彼の女と共に立ち上った。しかし教授はぐずぐずしていた。
それに足許あしもとは、破片といわずしかばねといわずまだ余熱をくすぶらしていて、恐しく嶮悪けんあくであった。常盤橋ときわばしまで来ると、兵隊は疲れはて、もう一歩も歩けないから置去りにしてくれという。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)