嶄岩ざんがん)” の例文
二、三の隆起を一上一下しながら通り過ぎ、嶄岩ざんがん兀立ごつりつした急斜面を登ると、霧の中から岩の尖塔が高く現れた。仁田河内ノ岳(地図の茶臼岳)である。
大井川奥山の話 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
橋あり長さ数十間その尽くる処嶄岩ざんがん屹立きつりつ玉筍ぎょくしゅん地をつんざきて出ずるの勢あり。橋守に問えば水晶巌なりと答う。
旅の旅の旅 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
この外輪山の西南部に偏して噴出した中央火口丘が即ち妙高山で、外輪山の総称であるくるわ岳に対してしん岳とも呼ばれ、頂上は嶄岩ざんがん突兀とっこつとして頗る奇観を呈している。
真白な山体に黒く印された十数条の嶄岩ざんがんの列は、東の絶壁が容易に近付き難きことを示している。
三国山と苗場山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
頂上は一段高く抜け上って、のし懸るように聳えているのが大鷲のくちばしのように鋭い。左右の肩から胸のあたりへかけて、嶄岩ざんがんの列が凄まじい岩の大波を捲き起している。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
頂上は磊砢らいらたる嶄岩ざんがんの堆積であって、南北の二隆起に分れ、肉眼ではいずれが高いか判じかねるが、三角点は北の隆起に置かれ、其附近のみわずかに一しゃくの平地を存している。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ただ一列の嶄岩ざんがん——或者は縦横に切りさいなまれてきずだらけの胴体が今にも一片一片剥がれ墜ちようとし、或者は堅硬な岩面に加えられた風雨の鑿氷雪のかんなに抉られ削られて
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)