山根やまね)” の例文
「うちの抱え芸者じゃが、あの翌る日に、急に、仕換しかえをするというて、「山根やまね」に変ったんで、妙なことに思うとった。こんな卑怯な芝居をしくさっとる」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
右のとまり山するは此地にかぎらずほかにもする所あり。小出嶋こいでじまといふあたり、上越後山根やまね在々ざい/\にてもするなり。すべて深山みやまにありて事をなすには山ことばといふありてこれをつかふ。
段々だら/\りの谿底たにそこに、蹲踞しやがむだやうな寺の建物が見え、其の屋根を見渡しに、ずつと向うの山根やまねちつぽけな田舎家がこぼれたやうにちらばつてゐて、那様あんな土地ところにも人が住むでゐるのかと思はしめる。
茸の香 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「よし、きみはさがっていたまえ。つぎは、山根やまね君だ。ここへ来たまえ。」
宇宙怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
染奴は、「飛鳥あすか」から「山根やまね」に仕換えして、相変らず、友田喜造と関係をつづけていたが、その夜は友田と逢ったのではなかった。三菱の宴会によばれたのである。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)