山峡やまかひ)” の例文
旧字:山峽
五月雨さみだれの生暖かき夜なんどは彼方の峯、此方こなた山峡やまかひより人魂の尾を引きてこの寺の方へ漂ひ寄り来るを物ともせぬ強気者したゝかものに候ひしが、わらはを見てしより如何様にか思ひ定めけむ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
山峡やまかひに藁葺きの屋根が見え出した。それがダニーロの父祖から伝はる屋敷である。
朝なさな船の太笛ふとぶえ聞きしより山峡やまかひのこともわきて思はず
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
山峡やまかひに橋を架けむと耀くは行基菩薩か金色光こんじきくわう
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
山峡やまかひの水の流れが深々と耳に響いた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)