屍骸なきがら)” の例文
首をねた後の屍骸なきがらを、無慙むざんな木曽家の奴ばらは巴ヶ淵へ蹴込んだのだ。いまだに私の屍骸は、巴ヶ淵の底にある。そればかりではない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ときを作って踏み込んだまではいいが、奥の一間に、富五郎の屍骸なきがらに折り重なってよよとばかりに哭き崩れる女房を見出しては
あのお熊さんの屍骸なきがらの口の中に在った黒い血の塊の中に、青紫色のお粥の粒が混じっておりましたのが何よりの証拠……
近づく日わが屍骸なきがらを曳かむ馬を
わがひとに与ふる哀歌 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
無念は言葉にも尽せぬが、それより一層恐ろしいのは、この西班牙イスパニア風習ならいとして屍骸なきがらに首のない時は、天界に産れ変わることが出来ないのじゃ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
蔵元屋の夜具を包んだ風呂敷にお熊さんの屍骸なきがらを包んで、この墓原へ持って来て、一刀両断に斬り棄てました。
と、灯火のほのかの光に淡くおぼろに照らし出されたのは血に染んだ柵の屍骸なきがらである。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)