居合いあわ)” の例文
「しかし、それは雪子ちゃんの性格から来る悲劇やさかい、電話の時にお前が居合いあわせたにしたところで、結果は同じことになるのと違うか」
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
母はただ叔父おじに万事を頼んでいました。そこに居合いあわせた私を指さすようにして、「この子をどうぞ何分なにぶん」といいました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
空屋には偶然にものお葉が居合いあわせて、彼女かれは冬子をすくわんとして𤢖と闘った。そこまでの事は冬子も知っているが、気を失って倒れたのちの出来事はちっとも判らぬ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「わしは、坑内に居合いあわさなかったからね。」あやしげな口調になった。「こうして、監督がここへかついで来さしたんだから、勿論、まだ、命はあったかもしれんな。」
土鼠と落盤 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
蘭堂は令嬢消失の次第を聞き終ると、その場に居合いあわせた書生に尋ねた。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
此度このたびの事件については、見す見す間違った推断によってつみせられんとする我学界の長者を救うものは、偶然にもその現場に居合いあわして、一寸した証拠物件を手に入れた、この私の外にないと信ずるが故に
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)