尾久おぐ)” の例文
その夜、小林の死体をのせた自動車は、それらの土地のうちで代々木からは最も遠い尾久おぐのあき地に到着し、ヘッドライトを消して停車した。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこで、このときも二十六日に、尾久おぐから千住せんじゅを越えて隅田村すみだむらに、というご沙汰さたが下りました。お供を仰せつかったのがまず紀、尾、水のご三家。
戌刻いつつ半(九時)ごろ小台の方から堤の上に提灯ちょうちんが六つ出て、そいつが行儀よく千住せんじゅの方へ土手を練ったんで、川向うの尾久おぐは祭のような騒ぎだったそうですよ
田園調布の町も尾久おぐ三河島みかわしまあたりの町々も震災のころにはまだすすきの穂に西風のそよいでいた野原であった。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
祖父は自分はスープを、私にはハヤシライスをあつらえた。おかみが出てきて祖父に挨拶した。この人はいつも髪をハイカラ巻にしていた。私はこの人に尾久おぐの大滝に連れていってもらったことがある。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
尾久おぐの渡は荒川小台村と尾久村との間を流るゝ処にあり。
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
堤の南は尾久おぐから田端たばたにつづく陋巷ろうこうであるが、北岸の堤に沿うては隴畝ろうほと水田が残っていて、茅葺かやぶきの農家や、生垣いけがきのうつくしい古寺が、竹藪や雑木林ぞうきばやしの間に散在している。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
尾久おぐだ」
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)