少許ちっと)” の例文
蟀谷こめかみのところへ紫色の頭痛こうなんぞをって、うるんだ目付をして、物を思うような様子をして、へえ前の処女おぼこらしいところは少許ちっともなかった。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのまなこでなうて、そんな鬪爭けんくわまなこ何處どこにあらう? 足下おぬしあたまには鷄卵たまご黄蛋きみ充實つまってゐるやうに、鬪爭けんくわ充滿いっぱいぢゃ、しかも度々たび/″\打撲どやされたので、少許ちっと腐爛氣味くされぎみぢゃわい。
「私のすることは少許ちっと貴方あなたの為に成らないッて、そう言って叱られましたよ——私が足りないからです」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「源さのいかくなったには、わし魂消たまげた。全然まるで、見違えるように。しかし、おめえには少許ちっとていねえだに」
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)