小間物店こまものみせ)” の例文
すると霊岸町れいがんちょうの手前で、田舎丸出しの十八、九の色のあおい娘が、突然小間物店こまものみせひろげて、避ける間もなく、私の外出着の一張羅いっちょうら真正面まともに浴せ懸けた。私はせんすべを失った。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
古靴屋の手に靴は穿かぬが、外套がいとうを売る女の、ぼたんきらきらと羅紗らしゃの筒袖。小間物店こまものみせの若い娘が、毛糸の手袋めたのも、寒さをしのぐとは見えないで、広告めくのが可憐いじらしい。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たけの長いおどろしき黒髪が軒ばに手招きしている小間物店こまものみせは、そこのうす暗い奥に、とろけそうなたいまい、鼈甲べっこう、金銀青貝の細工さいくるいが、お花畑ほど群落していようとも、男にとっては
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)