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こまものみせ
すると
霊岸町の手前で、田舎丸出しの十八、九の色の
蒼い娘が、突然
小間物店を
拡げて、避ける間もなく、私の外出着の
一張羅へ
真正面に浴せ懸けた。私は
詮すべを失った。
古靴屋の手に靴は
穿かぬが、
外套を売る女の、
釦きらきらと
羅紗の筒袖。
小間物店の若い娘が、毛糸の手袋
嵌めたのも、寒さを
凌ぐとは見えないで、広告めくのが
可憐らしい。
丈の長いおどろしき黒髪が軒ばに手招きしている
小間物店は、そこのうす暗い奥に、とろけそうなたいまい、
鼈甲、金銀青貝の
細工の
類が、お花畑ほど群落していようとも、男にとっては