小灯こともし)” の例文
楓の上にあかりさして、小灯こともしの影ここまでは届かず月の光に消えたり。と見る時、立姿あらわしたまいしが、寝みだれていたまいき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真黒まっくろな溝の縁に、野をいた跡の湿ったかと見える破風呂敷やぶれぶろしきを開いて、かたのごとき小灯こともしが、夏になってもこればかりは虫も寄るまい、あかり果敢はかなさ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小灯こともし朦々もうもうと包まれた湯気の中から、突然いきなりふんどしのなりで、下駄がけで出ると、さっと風の通る庇間に月が見えた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)