寺方てらかた)” の例文
わざとばかりの饂飩振舞うどんぶるまいのあとには、隣村の寺方てらかた、村の宿役人仲間、それに手伝いの人たちなぞもそれぞれ引き取って帰って行った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
在方ざいかたの床下にあるものが、寺方てらかたの床下に無いといふ法は無い。知恩寺の床下からは、つい先日こなひだ食べ荒したばかりの魚の骨がどつさり出た。
在家ざいけではどんなことをするか知らんし、また寺方てらかたでも白衣科と書くかどうか、そんなこと知らん。わしはわしの書きたいやうにするんや。」
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
寺方てらかたでは夏花げばなは盆のかかりまで、一夏中を通して立てておくというに反して、多くの民家では八日を過ぎれば卸して川へ流し、または乾かし貯えて雷鳴の日にいたり
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
是が銘酒めいしゅという語の起原である。酒は本来は女の造るものときまっていたのに、こういう銘酒の産地が、多くは婦人と縁のない寺方てらかたであったということは、ちょっと珍しい現象である。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)