寵姫おもいもの)” の例文
照近江てるおうみのお鯉という名は、時の宰相の寵姫おもいものとなる芽出度めでたき、出世登竜門の護符ごふうのようにあがめられた。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
姿、容子、化粧つくりおごり、身分のあるもののおてかけか寵姫おもいものか、およそ容易ならぬ女でした。
殊に際立って眼が婀娜あだっぽい! ハハアこいつだな、頸飾りを調べに偽フィリップ殿下のお供をして行った女は! そして公爵未亡人から、殿下の寵姫おもいものと思われている女は! とうなずく。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「なあ、かわいそうじゃねえか——公方くぼうさまの、寵姫おもいものとも言われたひとがよ——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「そうでしょう? ですからわたしは、あの時の侍女こそ曲者だと踏んでますね。何かそこにはいわく因縁があるとね。高い声ではいえませんが、もしかするとあの侍女こそ、殿下の寵姫おもいものではなかろうかと、考えております」
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)