家敷やしき)” の例文
お城のように締りの厳重な一廓を構え、その中に美事な別荘好みのお家敷やしきを作り、水を引き、草木そうもくを植えて、満月をお住まわせになりました。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
村内の心ある者にはつまはじきせらるゝをもかまわずついに須原の長者の家敷やしきも、むなしく庭うち石燈籠いしどうろうに美しきこけを添えて人手に渡し、長屋門のうしろに大木のもみこずえ吹く風の音ばかり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
最初Xの町の人に聞くと、「幽霊家敷やしき」を問うのだと言った。その時、彼は心のうちで年若い巫女のことをいうのであろうと思った。何となれば巫女は、奇蹟を行って人を驚かしたからだ。
薔薇と巫女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
家敷やしきの? くるわを出て城下の町を離れると、俗に千間土堤せんげんどてという堤へ出たが,この堤は夏刀根川とねがわの水があふれ出る時、それをくい止めて万頃ばんけい田圃たはたの防ぎとなり、幾千軒の農家の命と頼む堤であるから
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
参って伯父の処に厄介になって居りまするうちに、この深川富川町に水司又市という人が有って、元は榊原様の家来で家敷やしきを出て、一たび頭髪あたまを剃り、又還俗げんぞくして按摩をして居る水司又市と聞きました故
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)