家中いへぢゆう)” の例文
世間をはゞかるやうにまだ日の暮れぬさきから雨戸あまどめた戸外おもてには、夜と共に突然とつぜん強い風が吹き出したと見えて、家中いへぢゆう雨戸あまどががた/\鳴り出した。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
家中いへぢゆうの障子を悉く明け放し空の青さと木葉このはの緑を眺めながら午後ひるすぎの暑さに草苺や桜の実を貪つた頃には、風に動く木の葉の乾いた響が殊更に晴れた夏といふ快い感じを起させたが
花より雨に (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
家中いへぢゆうの障子を悉く開け放し空の青さと木葉このはの緑を眺めながら午後ひるすぎの暑さに草苺や櫻の實を貪つた頃には、風に動く木の葉の乾いた響が殊更に晴れた夏と云ふ快い感じを起させたが
花より雨に (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
朝顔あさがほの花が日毎ひごとに小さくなり、西日にしびが燃えるほのほのやうにせま家中いへぢゆう差込さしこんで来る時分じぶんになると鳴きしきるせみの声が一際ひときは耳立みゝだつてせはしくきこえる。八月もいつかなかば過ぎてしまつたのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)