宵越よいごし)” の例文
「武士は食わねど高楊枝たかようじ」の心が、やがて江戸者の「宵越よいごしぜにを持たぬ」誇りとなり、更にまた「ころ」「不見転みずてん」をいやしむ凛乎りんこたる意気となったのである。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
未だ一円残っていますがこれで散髪屋に行き、——後五十銭残りますが、これもいっそつかって、宵越よいごしのぜにア持たねエ、クリスマスを迎えようかと愚考しています。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「なるほど」と青年は、耀かがやく眼をげて、道也先生を見たが、先生は宵越よいごし麦酒ビールのごとく気の抜けた顔をしているので、今度は「さよう」と長く引っ張って下を向いてしまった。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)