宵宮よみや)” の例文
宿へ帰っていてみると、蘆の湖の燈籠流しは年々の行事で、八月一日は箱根神社の大祭、その宵宮よみやに催されるものであるという。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ポン・トオ・シァンジュ、花市はないちの晩。風のまにまに、ふはふはと、夏水仙のにほひ、土のにほひ、あすはマリヤのお祭の宵宮よみやにあたるにいやかさ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
その上、宵宮よみやにしてはにぎやか過ぎる、大方本祭ほんまつり? それで人の出盛でさかりが通り過ぎた、よほど夜更よふけらしい景色にながめて、しばらく茫然ぼうぜんとしてござったそうな。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの男は、俺の事なら何でも知っている。鉄砲撃ちの平田と言えば、この地方の若い者は、絶対服従だ。そうだ、あしたの晩、おい文学者、俺と一緒に八幡様の宵宮よみやに行ってみないか。
親友交歓 (新字新仮名) / 太宰治(著)
梅雨があけると生国魂神社の夏祭が来る、丁度その宵宮よみやの日であった。
旅への誘い (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「散々見られましたよ。何しろ明日は神田祭だ、宵宮よみやの今晩から、華々しくやるつもりの踊り舞臺にポツリポツリと降つて來た夕立のはしりを避けてゐると、あの江戸開府けえふ以來といふ大雷鳴でせう」
そして十六日の宵宮よみや、はやくも明日を待ち兼ねてのうき立つはやしの音をのせ、軒々の注連しめを、提燈を、その提燈の上にかざした牡丹の造花をふいてわたる夕かぜの、いかに生き生きと、あかるく
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「なんだかお天気がはっきりしないので困ります。折角の三社様もきのうの宵宮よみやはとうとう降られてしまいました。きょうもどうでございましょうか」
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この年の夏は陽気がおくれて、六月なかばでも若い衆たちの中形ちゅうがたのお揃衣そろいがうすら寒そうにみえた。宵宮よみやの十四日には夕方から霧のような細かい雨が花笠の上にしとしとと降って来た。
ゆず湯 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この年の夏は陽気がおくれて、六月なかばでも若い衆たちの中形ちゅうがたのお揃い着がうすら寒そうにみえた。宵宮よみやの十四日には夕方から霧のような細かい雨が花笠の上にしとしとと降って来た。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)