おわ)” の例文
ここまで話すと、電車が品川へ来た。自分は新橋で下りるからだである。それを知っている友だちは、語りおわらない事をおそれるように、時々眼を
片恋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
七斤ねえさんは三碗の飯を食いおわって、ふと頭を上げると、胸の中が止め度なくはずんで来た。彼女は烏臼木の葉影を通して、ちびの太っちょの趙七爺ちょうだんなを見付け出したからである。
風波 (新字新仮名) / 魯迅(著)
そこで、大意を支那のものを翻訳したらしい日本文で書いて、この話のおわりに附して置こうと思う。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
阿Qは言いもおわらぬうちに足をもちゃげてけ出した。追っ馳けて来たのは、一つのすこぶる肥大の黒狗くろいぬで、これはいつも表門の番をしているのだが、なぜかしらんきょうは裏門に来ていた。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
老婆の話がおわると、下人はあざけるような声で念を押した。そうして、一足前へ出ると、不意に右の手を面皰にきびから離して、老婆の襟上えりがみをつかみながら、噛みつくようにこう云った。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
狂言は、それから、すっぱが出て、与六をだまし、与六が帰って、大名の不興ふきょうこうむる所でおわった。鳴物は、三味線のない芝居のはやしと能の囃しとを、一つにしたようなものである。
野呂松人形 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
己はむしろ、時にはあの女に憎しみさえも感じている。殊に万事がおわってから、泣き伏しているあの女を、無理に抱き起した時などは、袈裟は破廉恥はれんちの己よりも、より破廉恥な女に見えた。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)