子規ほととぎす)” の例文
子規ほととぎすの一声もそれと同じことで、待ち兼ねておった子規の一声が聞えたのに、生憎誰もおらぬとは残念だとその一声を愛惜するのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
私は翁の書をそでにしたなり、とうとう子規ほととぎすくようになるまで、秋山しゅうざんを尋ねずにしまいました。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
三四郎がのぞくやいなや隣の男はノートを三四郎の方に出して見せた。絵はうまくできているが、そばに久方ひさかた雲井くもいの空の子規ほととぎすと書いてあるのは、なんのことだか判じかねた。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山彦と啼ク子規ほととぎす夢ヲ切ル斧 素堂
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「え?」と小野さんは俄然がぜんとして我に帰る。空をかすめる子規ほととぎすの、も及ばぬに、降る雨の底を突き通して過ぎたるごとく、ちらと動けるあやしき色は、く収まって、美くしい手は膝頭ひざがしらに乗っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)