娑婆気しゃばけ)” の例文
旧字:娑婆氣
だが、この絵図面は見ねえ方がよかったな、これを見たために、せっかくの娑婆気しゃばけが立ちおくれをして、どうやらもとのがんりきに戻ってしまいそうだ
色気も娑婆気しゃばけも沢山な奴等やつらが、たかが暑いくらいで、そんなざまをするのではありません。実はまるで衣類がない。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
要するに主人も寒月も迷亭も太平たいへい逸民いつみんで、彼等は糸瓜へちまのごとく風に吹かれて超然とすまし切っているようなものの、その実はやはり娑婆気しゃばけもあり慾気よくけもある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
婆には娑婆気しゃばけや妄執も一倍深い。だが、とどのつまりは、王婆も一切を白状するしかなくなった。——そして、両者こもごもの自供は、胡正の筆記で、洩らさずそばから口書きとなっていった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
荷は軽そうなが前屈まえかがみに、てくてく帰る……お千世がじいの植木屋甚平じんべい、名と顱巻はちまき娑婆気しゃばけがある。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それほどの娑婆気しゃばけが、戻り掛ける途端とたんにもうきざしていたのである。そうしてどてらに呼ばれれば呼ばれるほど、どてらの方へ近寄れば近寄るほど、この娑婆気は一歩ごとに増長したものと見える。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)