奈辺なへん)” の例文
旧字:奈邊
かんたんにいえば、宇宙の意は奈辺なへんにあるやを知らないが、人類のしてきたことは、何千年も同じことを繰り返して来たようなものだった。古くから哲人は何度も云った。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奈辺なへんにあるや疑うばかりでなく、それぞれに危懼きぐ劃策かくさくを胸に包んでいると見えて、ちょっとの間だったけれども、妙に腹の探り合いでもしているかのような沈黙が続いた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
かつまた清湘老人の画に巨金を投じて複製を世に配した位の好者でありする点から見て、その望まれる陶磁器もそのネライが奈辺なへんいかなるところにあるかは察するに難くないが
国軍の本務は国防に在るか奈辺なへんに在るか、政治は国民の総意にるべきか一部少数の〔暴〕力に依るべきかは、厳として対立する見解にして、その間何等の妥協苟合こうごうを許されない。
二・二六事件に就て (新字新仮名) / 河合栄治郎(著)
在来われわれの見聞した国情からせば文芸の如きは微々びびとしてますます振わぬはずのものであるが、物資欠乏の世に在って雨後雑草の生える勢を示している。その原因はそもそも奈辺なへんに在るか。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)