夫人 ぶにん)” の例文
祖師堂は典正なのが同一棟ひとつむねに別にあって、幽厳なる夫人ぶにんびょうよりその御堂みどうへ、細長い古畳が欄間の黒いにじを引いて続いている。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
印度舎衛しゃえ国王波斯匿はしのくと、摩利夫人まりぶにんとの間に生れて、阿踰闍あゆしゃ国王に嫁した勝鬘夫人ぶにんが仏教に帰依きえした、その説示だという、最も大乗だいじょうの尊さを説いたもので、わが聖徳太子も
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
天武天皇が藤原夫人ふじわらのぶにんに賜わった御製である。藤原夫人は鎌足のむすめ五百重娘いおえのいらつめで、新田部皇子にいたべのみこの御母、大原大刀自おおはらのおおとじともいわれた方である。夫人ぶにんは後宮に仕える職の名で、妃に次ぐものである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
さざなみの寄するなぎさに桜貝の敷妙しきたえも、雲高き夫人ぶにん御手みて爪紅つまべにの影なるらむ。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)