太田道灌おおたどうかん)” の例文
それは寛正の頃、東国おおい旱魃かんばつ太田道灌おおたどうかん江戸城にあって憂い、この杉の森鎮座の神においのりをしたしるしがあって雨降り、百穀大にみのる。
急がずば湿れざらましを旅人の、あとより晴るる野路の村雨むらさめ——太田道灌おおたどうかんよく詠んだとは、まったく此の事であった。近年こんな夕立はめったにない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だからこの武蔵野の草分けは、江戸太郎でもなし、太田道灌おおたどうかんでもないし、徳川家康でもないということになる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鉄砲は暫らくお預けとして、長禄というと太田道灌おおたどうかんが江戸城を築いた年である。『八犬伝』には道灌は影になってるが、道灌の子の助友は度々顔を出してる。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
応仁乱がはじまると関東にのがれ、文明元年心敬の供をして川越かわごえ太田道灌おおたどうかんのもとに招かれた。それから美濃の郡上城におもむいて常縁から古今の伝授を受けたのである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
また太田道灌おおたどうかんが歌を作りて「かかる言葉の花もありけり」とめられたるが如き、歌の善き事が人を感ぜしめたるよりも、むしろ意外の人が歌詠みたりとの一事は人を驚かしたる者ありしなるべし。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)