大筒おおづつ)” の例文
なにしろ先方は二千人からの水兵が上陸して、列をつくって進退する。軍艦から打ち出す大筒おおづつの礼砲は近海から遠い山々までもとどろき渡る。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
明朝になったら、先生、退治しておくんなさいまし、あの大筒おおづつでもって。いかな海竜だって、大筒にゃかなわねえや
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「鉄砲、大筒おおづつ、火薬などを保有しておるものは、決してわが織田第一ではない。織田家はまだまだ遅れておる」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大筒おおづつ役として八百石、家光の代に御鉄砲御用衆筆頭大筒方兼帯を仰付けられ、世禄せろく千八十石、役料三百俵、左太夫と通称する、代々、世襲せしゅうの家筋になり、同役、御用衆のうち
ひどい煙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
尾州から江戸送りの大筒おおづつの大砲や、軍用の長持が二十二さおもこの街道に続いたことを思い出し、一人持ちの荷物だけでも二十一もあったことを思い出して
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、ただすと、毛利軍には、南蛮砲なんばんほう大筒おおづつがあるので、その巨弾が命中し、粉砕されたものだろうという。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんでも一気にこの御番所へあばれこんで、火をつけてしまえ、ということだったそうでございますが、なかに、この御番所には大筒おおづつがある、大筒をブッ放されてはたまらない
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
尾張の家中は江戸の方へ大筒おおづつの鉄砲を運ぶ途中で、馬籠の宿の片側に来て足を休めて行くところであった。本陣や問屋の前あたりは檜木笠ひのきがさや六尺棒なぞでうずめられた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そうして張抜きの大筒おおづつをこしらえるわけではなし、謀叛むほんの相談をしているとも思われない。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おそらく、黒田官兵衛が、奔走ほんそうして、買入れて来たものであろう。旧式な石火矢いしびや大筒おおづつを捨てて、陣前の井楼せいろうに、南蛮製なんばんせいの大砲を城へ向けてすえつけたのも、秀吉がいちばん早かった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大筒おおづつで退治してくれというようなことは、思いつきの、お座なりの希望で、とにかく、この近海へ、異様な怪物が現われたから充分の御注意あってしかるべし、ということを
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
早乗りの駕籠かごは毎日幾立いくたてとなく町へ急いで来て、京都の方は大変だと知らせ、十九日の昼時に大筒おおづつ鉄砲から移った火で洛中らくちゅうの町家の大半は焼けせたとのうわさをすら伝えた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし、半蔵さん、征討軍の鉄砲や大筒おおづつは古風で役に立たなかったそうですね。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)