大家おおや)” の例文
それに裏の大家おおやの庭には、栗だの、柿だの、木犀もくせいだの、百日紅じっこうだのが繁っている。青空に浮いた白い雲が日の光を帯びて、緑とともに光る。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
少くも硯友社は馬琴の下駄のあとを印し馬琴の声を聞いた地に育ったので、幽明相隔つるといえ、馬琴と硯友社とはいわば大家おおや店子たなことの関係であった。
留守を頼んで行った大家おおやの若いしゅと、そこの子供とが、広い家のなかを、我もの顔にごろごろしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あの女が言ってる通り、路地の突当りの木戸を開けて、大家おおやひさしの下を通して貰い、自分の家へ駆け込んで蚊帳かやを吊って線香を焚いて居たことには間違いありません。
國「親里おやざとを拵えれば大家おおやでも頼むのでございますが、旦那が親になって上げてはいかゞです」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
店子たなこいわく、向長屋むこうながやの家主は大量なれども、我が大家おおやの如きは古今無類の不通ふつうものなりと。区長いわく、隣村の小前こまえはいずれも従順なれども、我が区内の者はとかくに心得方こころえかたよろしからず、と。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「おめえに眼をかけてくださる大家おおやの坊っちゃんてえのは誰だ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大家おおやさんの質屋にいくんですか。」
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
棺が小路こうじを出るころには、町ではもう起きている家はなかった。組合のものが三人、大家おおやのあるじ、それに父親に荻生さんとがあとについた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そのくせ、年がら年中、ピイピイの暮らし向き、店賃たなちんが三つ溜っているが、大家おおやは人が良いから、あまり文句をいわない。酒量は大したこともないが、煙草は尻から煙が出るほどたしなむ。
夜は大家おおやの中庭の縁側に行って話した。戦争の話がいつも出る。二三日前荻生さんから借りた戦争画報を二三冊またしてやったが、それについてのいろいろの質問が出る。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
抜けて、大家おおやさんの家のひさしの下を通して貰えば直ぐですよ、ピカリと来て大きいのが鳴ると直ぐ、私はもう喧嘩も何も忘れて帰ったんですもの、家へ飛び込むとすぐ、あの大雨がどっと来ましたよ
大家おおやか借金取りか、それとも叔母さんか」