夕餐ゆふめし)” の例文
妹のおすぎは夕餐ゆふめしの支度に取り掛つてゐたが、何時の間にか茶の間の入口に突立つてゐる兄の顏が目につくと吃驚びつくりした。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
その二階屋の表のとほりわたし夕餐ゆふめしのちに通つて見た。其処そここの田舎町の大通おほどほりで——矢張やはり狭かつた——西洋小間物みせ葉茶屋はぢやや、呉服商、絵葉書屋などが並んでた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
幸ひ好い奉公の口があつたが、先づ四五日はゆつくり遊んだが可からうといふ源助の話を聞いて、二人は夕餐ゆふめしが済むと間もなく二階に上つた。二人共「疲れた。」と許り、べたりと横に坐つて、話もない。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
夕餐ゆふめしの仕度を下女に任せて、大急ぎでくるまに乘つて、牛込から芝の西久保まで驅け付けた。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
夕餐ゆふめしの膳が片付いて、皆んなが彼方此方あちらこちらへ別れてゐるところへ、俥夫の提灯ちやうちんを先に、突如だしぬけに暗い土間へ入つて來た。散らばつてゐた家の者はまたぞろ/\出て來て一ところ/\に集つた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)