塗駕ぬりかご)” の例文
とばかり、蒼惶そうこうとして供揃ともぞろいの用意をさせ、玄堂を案内に、自身は徒歩かちで、一挺の塗駕ぬりかごを清掃して早々迎えに出向く。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝頼とその簾中れんちゅうを始め、かしず数多あまたの上﨟たちや、大伯母の君とか、御むすめ子とか、京の何御前とかいう女性の輿こし塗駕ぬりかごだけでも、いったい何百つづいたろう。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、待つ間もなく、人魂のような灯りを振り照らしてタッタと急いで来た黒漆こくしつ塗駕ぬりかご、前後に四、五名徒士かちがついて、一散に羅漢堂の前を走り抜けようとした。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忍びやかな塗駕ぬりかごを閉じて、ただ一度、泉岳寺へ参詣したほか、外へ出たことも殆どない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのほかは旗本から平侍ひらざむらいや足軽までを合わせても、千人には足りなかった。しかもおびただしい数は、簾中以下上﨟じょうろうたちの塗駕ぬりかご輿こしや、被衣姿かずきすがた徒歩かち、駒の背などの傷々いたいたしいものの数であった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
塗駕ぬりかごに小侍や中間ちゅうげんなど、二十人ばかりの一行が、彼のわきを通った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)