場中じょうちゅう)” の例文
場中じょうちゅうの様子は先刻さっき見た時と何の変りもなかった。土間を歩く男女なんにょの姿が、まるで人の頭の上を渡っているようにわずらわしくながめられた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またしても軽いバタバタが聞えて夢中になって声をかける見物人のみならず場中じょうちゅう一体が気色立けしきだつ。それも道理だ。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
快活かいかつ情愛じょうあいがあって、すこしも官吏かんりふうをせぬところから、場中じょうちゅう気受きうけも近郷きんごう評判ひょうばんもすこぶるよろしかった。近郷きんごう農民のうみんはひいきの欲目よくめから、糟谷は遠からずきっと場長じょうちょうになると信じておった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)