堂塔伽藍どうとうがらん)” の例文
けれど、彼の求める真理のかぎはなかった。太子がひろめられた教令のかたちはあっても、いつか、真理のたましいはどこにも失われていた。堂塔伽藍どうとうがらんはぬけがらであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
更にさかのぼって、保元平治の乱となり、両六波羅の滅亡となって、堂塔伽藍どうとうがらんも、仏像経巻も挙げて灰燼かいじんに帰するの日がなしと誰が断言する——不破の関守氏は仮りにその時を予想しているのである。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
叡山の堂塔伽藍どうとうがらんから坊舎楼門ぼうしゃろうもんのすべてと山王七社までを一夜に焼き払ったという信長が——と、信長のこころを、どう解していいかわからないような顔をしたものである。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうして極めて合法的に石山本願寺のわたしはすんだが、そのあとで、一炬いっきょ、全山の堂塔伽藍どうとうがらんと、多年の築城的門塁もんるいは、三日三晩にわたって、炎々、大坂の空に歴史の光煙こうえんを曳いて
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仁和寺にんなじの十四大廈たいかと、四十九院の堂塔伽藍どうとうがらん御室おむろから衣笠山きぬがさやまの峰や谷へかけて瑤珞ようらく青丹あおにの建築美をつらね、時の文化の力は市塵しじんを離れてまたひとつの聚楽じゅらくをふやしてゆくのだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)