基隆キールン)” の例文
やがて母と少年とは、冬の海を基隆キールンから下関へ、おなじ信濃丸に乗つて航海した。一年半まへの往路では四人だつたのが、帰り路では二人だつた。
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)
ようやく十月の半ば過ぎまで待って、その月の十一日に基隆キールン出帆の船に乗るという兄の通知が岸本のところへ届いた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は娘にはああは約束したが、たかだか台湾の基隆キールンか、せめて香港ホンコン程度までであろうと予想していた。そこなら南洋行きの基点ではあり、双方好都合である。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
淋しい山に取かこまれた港は基隆キールン名物の濛雨におおわれて淡く、陸地にこがれて来た私達の眼前に展開され、支那のジャンクは竜頭を統べて八重山丸の舷側へ漕いで来た。
梟啼く (新字新仮名) / 杉田久女(著)
植木屋の六の親子も入れて十四五人ぐれえ居りましたっけが……そんな連中に基隆キールンで買った七十銭の地球儀を見せびらかして、日本の小さい処を講釈して聞かせたりして片付いておりましたがね。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
真直まっすぐ行けば基隆キールンまで行きますよ。基隆から船で内地へ行かれるのですか。それとも別に目あてのない気紛れの旅行ですか。それなら、どうです? 僕も旅行家ですが僕と一緒いっしょに二八水で降りては。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
少年の第一印象にのこる基隆キールンは、肌寒い秋雨の港である。
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)
そして船はその日の夕方ちかく、基隆キールンにはいつた。
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)