したた)” の例文
真ッ暗な二重壁の廊下を、ミシ、ミシと手さぐりで進みながら、右手めてに水のしたたるような大刀を抜いてうしろへかくし
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この娘はそれ程まれな美人というのではないかも知れない。只薄紅の顔がつやつやと露がしたたるようで、ぱっちりした目に形容の出来ない愛敬がある。洗髪を島田に結っていて、赤い物なぞは掛けない。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あの凜々りりしい、水のしたたるような若い殿様ぶりが、今は頭の髪から着物に至るまで、まるで打って変って異人のような姿になり、その上に昔は、仮りにも一国一城を預かるほどの格式であったが、今は
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)