国俊くにとし)” の例文
旧字:國俊
「むむ、そうだ。お前の袖に引っかかった刀はこれだ。鍛えは国俊くにとし、家重代。先祖はこれで武名をあげたと、年寄りどもからたびたび聞かされたものだ」
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それが睡薬の名残と知らない新九郎は、眩暈めまいをこらえてまた起き直り、ふと枕元を見ると、昨日、御方に持ち去られた筈の国俊くにとしの一刀が、いつの間にかちゃんと置いてあるではないか。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元来圖書は山三郎をおどす気だから、栗毛の馬に鞍を置き、脊割羽織せわりばおり紺緞子こんどんす天鵞絨びろうど深縁ふかべりを取った野袴のばかまに、旧金森の殿様から拝領の備前盛景びぜんもりかげ国俊くにとしの短刀を指添さしぞえにしてとっ/\と駈けて来る。