喉頭こうとう)” の例文
あたかもキーのなくなってる鍵盤けんばんの上では音が出ないように、彼女の言葉の一部は喉頭こうとうからくちびるへ来る途中で消えてしまった。
依て亦両手にて藁縄を下方に引く時は、喉頭こうとうを押すは※ずるも尚肩の疼みは増加するのみならず、両肩は前後より圧迫せられたるを以て殆んど痲痺するが如きに至れり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
僕は喉頭こうとう結核の上に腸結核も併発している。妻は僕と同じ病気にかかり僕よりも先に死んでしまった。あとには今年ことし五つになる女の子が一人残っている。……まずは生前のご挨拶あいさつまで
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼はページを開くとすぐ眠くなった。それは努めて読んで行くとその索寞さくばくさに頭が痛くなって、しきりに喉頭こうとうへ味なるものが恋い慕われた。彼は美味な食物をあさりに立上ってしまった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
お絹は滑らかなくびの奥で、喉頭こうとうをこくりと動かした。煙るような長いまつげの間からひとみを凝らしてフォークに眼をり、瞳の焦点が截片にあたると同時に、小丸い指尖ゆびさきを出してアンディーヴをつまみ取った。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)