啼音なきね)” の例文
床に海棠かいどうがいけてあった。春山の半折はんせつが懸かっていた。残鶯ざんおう啼音なきねが聞こえて来た。次の部屋で足音がした。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
禰宜ねぎ山辺守人やまのべもりとは、時鳥ほととぎす仏法僧ぶっぽうそう啼音なきねばかりを友として、お宮の脇の小さい社家に住んでいたが、甚助の姿が見えると、かたこと木履ぼくりの足音をさせて出て来た。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海は、はろばろとはてしもなく、濃紫こむらさき色にひろがっていて、何処からか、海鳥の啼音なきねがきこえてくる。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
かすかなる 鳥の啼音なきねのつらなれり
蛇の花嫁 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)