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啻
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た
ふりがな文庫
“
啻
(
た
)” の例文
仮装会は
啻
(
た
)
だ鹿鳴館の一夕だけでなくて、この欧化時代を通ずる全部が仮装会であった。結局失態百出よりは滑稽百出の喜劇に終った。
四十年前:――新文学の曙光――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
生を
享
(
う
)
け、
人間
(
じんかん
)
に出でゝ、心を労して
荊棘
(
けいきよく
)
を
過
(
すぐ
)
る、或は故なきに敵となり、或は故なきに味方となり、恩怨
両
(
ふた
)
つながら暴雨の前の
蛛網
(
ちゆまう
)
に似て、
徒
(
いたづ
)
らに
啻
(
た
)
だ毛髪の細き縁を結ぶ
哀詞序
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
啻
(
た
)
だに死を恐怖しないのみでなく、或は恋の為めに、或は名の為めに、或は仁義の為めに、或は自由の為めに、扨は現世の苦痛から遁れんが為めに、死に向って猛進する者すら有るではない歟。
死生
(新字新仮名)
/
幸徳秋水
(著)
短かい飜訳であるが
啻
(
た
)
だ飜訳界の新生面を開いたばかりでなくて、新らしい文芸の路を照すの光輝ともなった。その文壇に与えた効果は『浮雲』よりもかえって偉大であったかも知れない。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
奇なるかな一は侠勇を尊び、一は艶美を
尚
(
たふと
)
びて、各自特異の
旗幟
(
きし
)
を
樹
(
た
)
てたるや。その始めは、共に至粋の宿れるなり、
啻
(
た
)
だ一は之を侠勇に形成し、一は之を艶美(所謂粋)に形成したるの別あるのみ。
徳川氏時代の平民的理想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
▼ もっと見る
啻
(
た
)
だ数量ばかりでなく優品をも収得したので、天筠居は
追
(
おっ
)
ては蒐集した椿岳の画集を出版する計画があったが、この計画が実現されない中に、
惜
(
おし
)
い
哉
(
かな
)
、この比類のない蒐集は大震災で
烏有
(
うゆう
)
に帰した。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
当時の欧化熱の急先鋒たる公伊藤、侯井上はその頃マダ壮齢の男盛りだったから、
啻
(
た
)
だ国家のための政策ばかりでもなくて、男女の因襲の垣を撤した欧俗社交がテンと面白くて堪らなかったのだろう。
四十年前:――新文学の曙光――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
啻
漢検1級
部首:⼝
12画
“啻”を含む語句
啻事
不啻毛嬙飛燕
鐘啻