和綴わとじ)” の例文
和綴わとじの十二三枚の紙のもので表紙には、僧に似ない行成ゆきなり流の、しなやかな筆で「寺宝及承伝書籍目録」高沢寺と書かれてあった。
(新字新仮名) / 楠田匡介(著)
鶴見が受合って、印刷させて、和綴わとじの小冊子が出るようになった。端書はしがきも添えておきたいという。鶴見が代筆をして、一枚ばかり俳文めいた文章を書いた。
ただ私は、それが和綴わとじの本で、中には色々な植物の花の絵などがあったのを、覚えているだけである。
御萩と七種粥 (新字新仮名) / 河上肇(著)
夏の朝、早くから行くので、昌綱さん(先生の弟御)が大急ぎで座敷を掃いて、踏みつぎをして、上の方の本箱から、納めてある和綴わとじ本の大判のを出して貸してくだされた。
和綴わとじのかなり厚い一冊物で、表紙は茶色の熨斗目のしめ模様、じゃばらの糸で綴じてあり、綴目の上下に紫色の切れが張ってあって『心の種』と書いてあります。橘守部たちばなもりべの著なのです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
そのほかに、もう一冊、これも煤けた、虫くいだらけの和綴わとじの本が箱に入っていた。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
紫表紙和綴わとじにして金で大菩薩峠の文字を打ち出すことにしたが、これがなかなか思うようには行かなかった、製本屋も本式の大量製産をやる店ではなかったので、なかなか迷惑がったようであるし
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)