呂律りょりつ)” の例文
「いやいや、その呂律りょりつには重蔵の義心があろう、たえな調べには千浪の孝心貞節もこもるであろう、予はその妙韻みょういんを聞きすましたい、是非、何がな一曲すさんでくれい」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
笛は大部分定型的な呂律りょりつを、定型的なタイムを踏んで繰り返すに過ぎぬ。大鼓も小鼓も、太鼓も四ツか三ツかの僅少な音の変化によって八、六、四、二の拍子を扱って行くに過ぎぬ。
能とは何か (新字新仮名) / 夢野久作(著)
舟では音締ねじめばちの冴え、どこかを流す虚無僧ぼろんじ尺八たけ呂律りょりつも野暮ではない。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
風のかげんか、喨々りょうりょうと澄んで高く聞こえてくるかと思うと、ぎれて、消えなんとし、消えたかと思えばまた、嫋々じょうじょうたる呂律りょりつが川波にのって流れ、そしてだんだんに近づいて来るのであった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)