吩附いいつ)” の例文
なんとも見当のつかない使者の役目を吩附いいつけておいて、あとからノコノコと跟いて来るという挙動も、なんだか人を見縊みくびったようでもあります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
市郎も立寄たちよってあらためた。彼は医師である。左右の人々に吩附いいつけて、かくもお杉を我家へき入れさせた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もしか、按摩が尋ねて来たら、堅くらん、と言え、と宿のものへ吩附いいつけた。叔父のすやすやは、上首尾で、並べて取った床の中へ、すっぽり入って、引被ひっかぶって、いい心持に寝たんだが。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこで、鏡はわれに要なければ返し取らせよ、定めて何彼と物の用あろうほどに、我がものは何なりと惜みなく其人に取らせよ、よくよくあわれびをかけよ、と吩附いいつけて、涙の漏る眼をおし拭うた。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もうそれが決定的であることのように家人に吩附いいつけた。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)