向柳原むこうやなぎわら)” の例文
金田氏はもと刀剣の鞘師さやしでありましたが、後牙彫商になって浅草向柳原むこうやなぎわらに店を持っている貿易商人で、おもに上等品を取り扱っているので
「変なこともあるだろうよ。近頃は向柳原むこうやなぎわらへ行くと、男たちは皆んな魔がさしたようにソワソワしているっていうじゃないか」
(しかし千葉子玄しげんの『芸閣うんかく先生文集』(三巻)を見るに平洲は向柳原むこうやなぎわらなる幕府天文台の近くに住居していた事がある。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そりゃあ陽気のせいじゃありますまい」と、地弾ぢひきらしい年増としまの女が隅の方からいやに笑いながら口を出した。「向柳原むこうやなぎわらはどうしたのか、この二、三日見えないようですね」
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その頃ガラッ八は、向柳原むこうやなぎわらの叔母の家に泊り込んでおりました。無人で困るからと言う叔母の願いを叶えてやる積りの八五郎。
柳北の新館とは確堂がその側室お蝶のために文久元年六月向柳原むこうやなぎわらに築いた有待舎のことであろう。有待舎の記は博文館梓行しこうの『柳北全集』に載っている。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
向柳原むこうやなぎわらの大工の熊五郎が請人うけにんで、お鈴の親は遠国にいるから、とむらいには間に合わない。形見の品でも送ってやる外はあるまいということで」
向柳原むこうやなぎわらの叔母さんの二階に、独り者の気楽な朝寝をしている八五郎は、往来から声を掛けられて、ガバと飛起きました。
八五郎のガラッ八と来ては、向柳原むこうやなぎわらの叔母さんが無尽に当っても、隣の荒物屋の猫が五つ子を生んでも、天下の大事扱いにしかねないあわて者です。
これは、医者と言うよりは、本草家の方で有名でしたが、行方不明になってから一ヶ月目、向柳原むこうやなぎわらの土手の上で、袈裟掛けさがけに斬られて死んでおりました。
その途中、向柳原むこうやなぎわらの荒物屋の二階を借りて不精な男世帯を持っているガラッ八の八五郎のことを思い出しました。
向柳原むこうやなぎわらの叔母さんの家にとぐろを巻いているガラッ八の八五郎のところへ、思わぬ人間が飛込んで来ました。
お琴のうわさまで出た後で、ガラッ八も最初は渋りましたが、向柳原むこうやなぎわらの叔母の家に居ても、親分の平次の家に居ても、居候に変りはないのですから、結局晩酌と御馳走と
親分のところに泊っているのは、田舎からめいが来て、向柳原むこうやなぎわらの叔母の家が急に狭くなったからだ。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
そんな金じゃありませんよ、親分、向柳原むこうやなぎわらの叔母が、——天霊てんれい様の御本山におまいりをするついでに、西国を一と廻りして来るから、二度と江戸へ帰るか帰らないか判らない。
向柳原むこうやなぎわらの彦兵衛だなで、背負商せおいあきないの小間物屋をしている宇太八うたはちというのが私の父親で」
「親分の前だが、正直のところ喉から手が出るほど欲しかったよ。あれだけありゃ、夏冬の物をみんなお蔵から出して、向柳原むこうやなぎわらの叔母にも、腐ったあわせの一めえぐらいは着せられると——」
「わかりますかえ親分、向柳原むこうやなぎわらの叔母の家から来たのじゃないってことが」
「親分、聞いて下さい。昨夜ゆうべ向柳原むこうやなぎわら十三屋とさやのお曾与そよが殺されましたよ」
向柳原むこうやなぎわらの油屋の娘お勢という十九になる可愛いのが、少しでも早く行って、お秀さんに手伝って上げようと思ったばかりに、うっかり傘を忘れて飛び出し、柳橋の手前であの大夕立に逢ったのです。
向柳原むこうやなぎわらの叔母さんは解っているが、あとの二人は誰と誰だい」
「親分、赤い痣のある男が向柳原むこうやなぎわら煎餅屋せんべいやに居ますぜ」
向柳原むこうやなぎわら梶四郎兵衛かじしろうべえ様の御嬢様で——」