右往左往うおうざおう)” の例文
それは蛇形だぎょうじんのごとく、うねうねと、裾野すそののあなたこなたからぬいめぐってくる一どう火影ほかげである。多くの松明たいまつ右往左往うおうざおうするさまにそういない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玩具箱! 彼は実際神のように海と云う世界を玩具にした。かに寄生貝やどかりまばゆい干潟ひがた右往左往うおうざおうに歩いている。浪は今彼の前へ一ふさの海草を運んで来た。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
鬼は金棒かなぼうを忘れたなり、「人間が来たぞ」と叫びながら、亭々ていていそびえた椰子やしの間を右往左往うおうざおうに逃げまどった。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
竹童のあわい影が平地へいちからがけへ、がけから岩へ、岩から渓流けいりゅうへと走っていくほどに、足音におどろかされたおおかみうさぎ、山鳥などが、かれの足もとからツイツイと右往左往うおうざおうに逃げまわる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)