古手ふるて)” の例文
大森氏はためつすがめつ髑髏しやれかうべを見てゐた。ちやう梅雨つゆ時分の事で、髑髏しやれかうべからは官吏や会社の重役の古手ふるてから出るやうな黴臭かびくさ香気にほひがぷんとした。
おい大将、唖聾のまねなんざあもう古手ふるてだぞ。この石倉の中の道具は何に使用するものか知ってるだろう。そんな無駄な世話を焼かすもんじゃない。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「私同様もう古手ふるてですけれど、一時は鳴らした陸軍の戦術家です。瀬戸君のお祖父さんのお弟子さんだそうですよ」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
元宮様のほうは知らないけど、外交官の古手ふるてぐらいは出るらしいから、大公使はまんざら嘘でもないのよ。
姦(かしまし) (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
大通りで背の高い金髪の人が、君はユシュルーかみさんを知ってるかって私に言いました。知ってる、シャンヴルリー街の古手ふるての後家さんでしょう、と答えると、こう言ったんです。
古手ふるての『人生觀』がこほんこほんと咳をして
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
「畜生。今どきそんな古手ふるてを食うものか。」
真鬼偽鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
めかけ古手ふるてかもれない。』
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「ここ病院の古手ふるてと違うか」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)