原来がんらい)” の例文
旧字:原來
もう何十年か奉公人を使ったことがないのに、原来がんらい優しい性分だから、小言は言わない。只女中のする事が一々自分の意志に合わぬので、不平でならない。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
今宵のうちに一眼逢ひて久後きごの事ママなど問ひ置かんと、原来がんらい女丈夫の精悍しく提灯照し甲処乙所どこそこと尋ね廻りし、裏河岸伝ひ思ひがけなき材木の小蔭に鼾の聴ゆるは
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
原来がんらい平井氏は善書ぜんしょの家である。祖父峩斎がさいはかつて筆札ひっさつ高頤斎こういさいに受けて、その書が一時に行われたこともある。峩斎、通称は仙右衛門せんえもん、その子を仙蔵せんぞうという。のち父の称をぐ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかし学問なぞをしない、智力の発展していない多数に不用なのである。学問をしたものには、それが有用になって来る。原来がんらい学問をしたものには、宗教家のう「信仰」は無い。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
原来がんらい疱瘡ほうそうを治療する法は、久しく我国には行われずにいた。病が少しく重くなると、尋常の医家は手をつかねて傍看ぼうかんした。そこへ承応じょうおう二年に戴曼公たいまんこうが支那から渡って来て、不治の病をし始めた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)