南洲なんしゅう)” の例文
また南洲なんしゅう自身についていえば、ようによりては外貌がいぼうおそろしい人のようにも思われ、あるいは子供も馴染なじむような柔和にゅうわな点もあった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
間もなく南洲なんしゅう終焉しゅうえんの地というのに辿り着いて俥から下りた。大将がかくれていた岩崎谷いわさきだに洞窟どうくつにも敬意を表した。引き返して城山へ登りながら
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
南洲なんしゅうの死も八千の子弟の運命も彼にはなんの交渉もなく、西南役は何よりも彼の大切なオブチをとり去ったものとして彼に記憶されるのであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかして軍艦の上に、西郷吉之助と署名して、南洲なんしゅう翁が横額に「万国一覧」と書いたのです。
同じ汽車に乗っているのだから、君さえ見ようと云えば、今でも見られます。もっとも南洲なんしゅう先生はもうねむってしまったかも知れないが、なにこの一つ前の一等室だから、無駄足を
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
肱近ひじちかのテーブルには青地交趾せいじこうちはちに植えたる武者立むしゃだち細竹さいちくを置けり。頭上には高く両陛下の御影ぎょえいを掲げつ。下りてかなたの一面には「成仁じんをなす」の額あり。落款は南洲なんしゅうなり。架上に書あり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)