労役ろうえき)” の例文
二人の鵜匠は手縄をいて鵜を舟にあげた。労役ろうえきを終った鵜は嬉しそうにそれぞれ羽ばたきをして、大きなのどを川風にふくらました。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
モコウは両親もなき孤児こじで船のコックになったり、労役ろうえき奴隷どれいになったりしていたが、富士男の父に救われてから幸福な月日をおくっている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
私は五年間に貰いためた労役ろうえきの賃金の入った状袋じょうぶくろをしっかりと握りながら、物珍ものめずらしげに、四辺あたりを見廻したのだった。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もとより凡ての伝統的な品が美しいわけではなく、凡ての労役ろうえきが美しさを将来するとは申されません。それで時代が低く、環境が悪いと、伝統自身が生気のないものに沈みます。
益子の絵土瓶 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その眼がたまたまぬすみ視したところが、それは別に意味も無い傍見わきみに過ぎないと、かの女は結論をひとりでつける。そして思いやり深くその労役ろうえきの彼等を、あべこべに此方こちらから見返えすのであった。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
声がおわらぬうちに、フハンはあわただしく洞のなかをかぎまわったが、とつぜん疾風しっぷうのごとくほらの外へ走り去った。一日の労役ろうえきをおわって一同は晩餐ばんさんのテーブルについたが、フハンは帰ってこない。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)