刺青師ほりものし)” の例文
その西洋式の讃美者は、この興行主のお角が諸肌もろはだを脱いで、江戸前の刺青師ほりものしに、骸骨の刺青を彫らせていることを知るものがない。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と云ったが、脊中の刺青がれましてしゝ滅茶めっちゃになりましたから、直ぐ帰りに刺青師ほりものしへ寄って熊にほりかえて貰い、これからくまの亥太郎と云われました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
併しこんな可笑しいお話ばかりではない、刺青の為には又こんな哀れなお話もあります。わたくしは江戸時代に源七という刺青師ほりものしを識っていまして、それから聴いたお話ですが……。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
墨染すみぞめ法衣ころもねて、諸肌もろはだぬげば、ぱッと酒気にくれないを染めた智深が七尺のりゅうりゅうたる筋肉の背には、渭水いすい刺青師ほりものしが百日かけて彫ったという百花鳥のいれずみが、春らんまんを
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清吉と云う若い刺青師ほりものしの腕きゝがあった。浅草のちゃり文、松島町の奴平やつへい、こんこん次郎などにも劣らぬ名手であると持て囃されて、何十人の人の肌は、彼の絵筆の下に絖地ぬめじとなって擴げられた。
刺青 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こういってお角が背中を向けたのは、そのころ名代の刺青師ほりものし、浅草の唐草文太からくさぶんたといういい男です。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)