出稼でかせぎ)” の例文
ある者は、家族を村に残して出稼でかせぎに来ていた。残っている家族は、樹の根をかじったり、草葉を喰ったりしていた。石の粉を食って死ぬ者もあった。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
全体信濃しなののその二人の故郷といふのは、越後ゑちごの方に其境を接して居るから、出稼でかせぎといふ一種の冒険心には此上もなく富んで居るので、また現在その冒険に成功して
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
田やはたけ収穫とりいれは済んだ。太吉の父親は病身の妻とその子を残して、上州へ出稼でかせぎに出たのである。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
此様こんな田舎へ出稼でかせぎするような身になって、前橋に居た時にもお前さんに逢いたいばかりで、厭だけれども茂之助を金持だと思って来て見れば、矢張やっぱり金は有りゃアしないんだアな
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「……出稼でかせぎ娼妓しょうぎ一群ひとむれが竜巻の下に松並木を追われて行く。……これだけの事は、今までにも、話した事がありましたから、一度、もう、……貴下あなたの耳に入れたかも知れません。」
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此村から外国がいこく出稼でかせぎに往った者はあまり無い。朝鮮、北海道の移住者も殆んど無い。余等が村住居の数年間に、隣字の者で下総しもうさの高原に移住し、可なり成功した者が一度帰って来たことがある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
遊女八人の身抜みぬけをさしたと大意張おおいばりの腕だから、家作などはわがものにして、三月ばかり前までは、出稼でかせぎの留守を勤めあがりの囲物かこいもの、これは洲崎に居た年増としまに貸してあったが、その婦人おんなは、この夏
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)